私は年子の妹とふたり姉妹です。
私も妹も幼少期から親に「おまえらは橋の下で拾ったんじゃ」と言われて育ちました。
何歳くらいの頃からそう言われてきたのかも定かではありませんが、特に深刻に受け止めていたわけでもなく「それは両親の冗談だ」と普通に受け入れてきたように思います。
ところで昭和の一時代、この子供を「橋の下で拾った」といって聞かせることは広く行われていたようです。
当時の一種の流行語だったのかもしれません。
親サイドにしたって、「こんなことをいうなんてけしからん!」という感覚もなかったでしょう。
私たち子供側も、それで特に傷ついたりした覚えもないですし、そんな家族で普通に育ちました。
ですがこの親の言説は、例えば近所の友達が習っているピアノやお習字を、とかく「うちは貧乏だから」と習わせてもらえず、従兄弟の家のおさがりの足踏みオルガンをあてがわれたときなどは、「ああ、早くお金持ちの実の親が迎えにきてくれないかなぁ」と私たち子供に夢想させたものです。
実の親がそんなにお金持ちなら橋の下に子供を棄てることはなかったのでは、とは当時考えなかったんですよね。
ちなみに私たち姉妹は尼崎で生まれ育ちましたから、拾われた場所は武庫川の橋の下だそうです。