今、開館30周年記念で「火の鳥」の企画展示をやっています。
子供のころ、大学生だった叔父が持っていた「朝日ソノラマ版」の火の鳥を何度も何度も夢中になって読みました。
火の鳥は、「人はなぜ死ぬのか」「なんのために生まれるのか」という永遠に答えの出ないテーマを、しつこいくらい繰り返す漫画です。
そしてそれぞれのエピソードの中で、多くの登場人物たちはいとも簡単に「死」によって退場を強いられます。
まるで「どんな人にも死は平等にやってくる」ということが示唆されるように。
死んでゆく人間たちは永遠の命を持つ火の鳥という光を受けて、そのコントラストがよりいっそう鮮やかにあぶり出されていくのです。
私の死生観は子供のころにこの火の鳥によって作られたと言っても過言ではありません。
火の鳥は時代ごとの複数エピソードで描かれますが、私にとって中でも特に印象的だったのが「鳳凰編(奈良時代)」と「望郷編(未来)」です。
好きすぎて、このふたつだけは今でも文庫版を手元に持っています。
手塚治虫記念館での火の鳥の企画展示は、各エピソードごとに生原稿の一部と説明を展示するというスタイルでした。
もう少し突っ込んだ企画を期待していましたが、あまり大きな施設ではないので、わりとあっさりとした展示内容になっていたのはやや残念です。
館内のライブラリーではほとんどの手塚治虫作品を手にとって読むこともでき、私は今日、火の鳥の「乱世編」を数十年ぶりに読みましたが、全て明瞭に覚えていて子供時代の刷り込みにびっくりです。
乱世編の舞台は平安時代、平清盛、木曽義仲、源頼朝、義経が登場する長大なエピソードです。
火の鳥シリーズでは火の鳥が登場人物と会話したり、時には助けたりして絡むのですが、「乱世編」では珍しく火の鳥が一切登場しないのも興味深い一編です。
最後に、記念館の地下にあるアニメーション作り体験コーナー「アニメ工房」で、スタッフの方に促されてパラパラアニメ作りを体験してみました。(この日この時間、体験コーナーは私一人でした)
2枚、あるいは5枚の絵を描いて、それをスタッフの方がスキャンしてパラパラ漫画を見せてくれる、という簡単なしかけです。
私は2枚描きましたが、5枚描くともっと面白そうですね。もし今後行く予定がある方はぜひ5枚チャレンジしてみてください。
子供連れだとかなり楽しめるのではないでしょうか。
そして私がこれをひとりでやってのけたのは、けっこう勇気があると思いませんか?(笑)