先日、日本画の体験講座を受けました。
油絵は学生時代に描いたことがあるのですが、本格的な『日本画』を描くのは初めてです。
「日本画とは何ぞや?」から始まる私の日本画体験、画材の知識は『粉末状の絵具を膠(にかわ)で溶いて和紙に定着させる』程度のものです。
この日の体験講座では、二日間でF3号(A4用紙に近いサイズ)の和紙が貼られたボードに日本画を描く、というのが目標です。
さてさて、小さめサイズとはいえ、たった二日間で日本画が描けるものでしょうか。
講座の全体の流れはこんな感じでした。
1)描きたい写生を和紙ボードにトレーシングペーパーで転写する。
2)墨をすり、面相筆で転写の線をなぞり描きする。
3)胡粉(ごふん)で下塗り用の絵具をつくる。
4)刷毛で下塗りをする。
5)背景を塗る。
6)モチーフを描き進める。
油絵や水彩絵の具だと、チューブから出した絵具をそのまま、または水に薄めて描き始めることができます。
ですが日本画は。。。
『絵具をつくる』ところからやるのです。。!
なんとなくイメージはしていたのですが、日本画は実際にやってみると手間のかかることこの上なし。
まず、下塗りや白い絵具として使う『胡粉(ごふん)』という貝殻の粉を、絵具として使える状態にするまでに、
・胡粉を乳鉢ですって細かくする(この日の講座ではすでに細かくすったものが用意されていました)
・膠(乾いた棒状)をふやかして膠液をつくる(これもすでに講座では用意されていました)
・胡粉団子を膠と水で溶きのばす
という工程を経なければなりません。
胡粉以外の色絵具も同じような工程で絵具をつくります。
色のついた粉を、膠という接着剤で和紙に定着させるのが、日本画の絵具です。膠の原料は動物(主に牛だそうです)のコラーゲンです。
いや、どんだけ面倒なん、日本画!と思いましたよ、実際。
描きこむ時間と同じくらいの時間、絵具作りをしていたような印象です。
しかも画面が濡れているときと乾いたときで色が大きく変化します。
なので、塗るべき色を決めるにも経験が必要です。
また、和紙へ塗り広げるのも油絵具のようにはいかず、グラデーションをつくるのは技術的に至難の業でした。
結局、経験のない私は二日間ではとうてい仕上げることはできませんでした。
絵を描く、というよりは、「日本画ってこういうものなんですよ」ということを体験した二日間となったわけです。
二日間の感想ですが、日本画は油絵の描き方と全然違うということを実感しました。
油絵はいきなりキャンバスにガンガン筆を入れていきます。描く対象物を目の前にして、線で描くというより面で塗り起こす感じです。
絵具は不透明だし、キャンバスは丈夫なので、いくらでも上に重ねることができるので、間違いなど気にせず大胆に塗りたくって大丈夫なのです。
なによりチューブから出した絵具をそのまま塗れるので、いきなり描きたい絵にとりつくことができます。
いっぽう日本画は繊細な和紙の上に描きます。
対象物はあらかじめ写生をしておき、最終的には写生を見ながら描くようです。絵具は水をたくさん含むので、絵具が流れてしまわないように、基本的に絵は平置きにして描きます。
失敗をどの程度リカバリーできるのか、初めてなので全然わかりませんが、あまり乱暴なことができないのは確かです。描き方には明確に『工程』があって、失敗すると濁ったり和紙の表面がキズになったりしそうです。
とにかく絵具つくりの行程は手間と時間がかかり、ほとんど修行のようです。
ですが、これだけの手間と時間をかけて描かれた日本画は、やはり独特の絵肌の風合いがあって、見る人を魅了します。
この日私は初めて日本画の絵具を触ったわけですが、想像以上の難しさに却ってファイトがわきました。
また機会を得て、この体験講座で描き始めた自分を絵を完成させてみたいと思います。