久しぶりにデジタルで絵を描きました。
近所のお寺で写生して、その絵をもとにペンタブで描いたものです。
今までは、自分で撮った写真をもとに描いていましたが、今回は自分で描いた『絵』をもとにして描く、というまどろっこしい方法でやってみました。
今回、久しぶりにデジタルで描いてみて、リアルで描く日本画との違いをいくつか感じることになりました。
1)色の深み
デジタルでは理論上、「全ての色」を出すことができます。
ですが、それはデジタル上でのこと。見るときもパソコンやスマホの画面上なので、にごりのない澄んだ色の表現は得意ですが、色に深みが感じられません。
また、同一レイヤー上では上に色を重ねると下の色は「変更される」ことになるので、下の色を残したままで上に色を重ねるときは新たにレイヤーを追加する必要があります。
私はいわゆる『萌え絵』は描けませんが、そうしたデジ絵を描く際には100枚以上ものレイヤーを使うそうです。
私が使うレイヤーの数は、トレスに使う元画像、線画、塗り、背景とたったの4枚です。
『デジ絵師』といわれる方々とは全く勝負になりません。
たった4枚でも、よく作業するべきレイヤーを間違えてしまうレベルなので、100枚ものレイヤーを管理できるデジ絵師の方々のスキルに脱帽です。
2)背景の処理
これは自分で使っているお絵描きソフトの機能の限界と、その機能すら自分が使いこなせていない、という問題も大きいのですが、どうも背景が上手くいきません。
日本画では、モチーフも背景も何度も岩絵の具を塗り重ねていくうちに存在感が出てきます。
『手間』がそのまま画面に痕跡となって表現される感じです。
デジタルでは、先ほどのレイヤー数にもよるのでしょうが、どうも単調になってしまいます。
今回も最初は背景を入れてみましたが、『白』の方がすっきりした印象の空間になったので最終的には削除しました。
3)やり直しがきかない緊張感
前回も書きましたが、デジタルは何度でもやり直しがききます。
なので、線を引くにしろ、塗り込むにしろいい意味で気軽に制作を進めていくことができます。
日本画では、描く前の準備として、和紙ににじみ止めを施して完全に乾かしてから木製のパネルに水張りしてまた完全に乾かす、というプロセスを経てやっと描き始めることができます。
紙のにじみ止めが上手く効いていなければ紙を替えての貼り直しをしなければなりません。
線画は墨をすって面相筆で描き起こしますが、墨は水ではがすことができないので一発勝負です。
塗り重ねる岩絵の具も、失敗すれば多少お湯で洗い流すことはできますが、値段の張る岩絵の具を流してしまうのもなかなか根性が要りますね。
やり直しが簡単ではないリアル日本画では、手が震えるほどの緊張感で筆を使うので、気のせいかもしれませんがデジタルと比較して「重み」のようなものがあるように感じます。
今のところデジタル、リアルともに始めたばかりでまだまだわかっていないことも多いのですが、今の段階で感じたことを記録してみました。
今後も双方のメリットを上手く取り入れて上達していけたら、と思っています。