宮沢賢治といえば、国語の教科書に必ずといっていいほど取り上げられている岩手県出身の詩人であり童話作家です。
私の子供のころも「雨ニモマケズ」の詩を学校で習ったのを覚えています。
宮沢賢治は今では国民的な作家ですが、生前はほぼ無名であったというのも驚きです。
「セロ弾きのゴーシュ」や「注文の多い料理店」などの有名な作品も多い宮沢賢治ですが、「ちょっとよくわからない不思議なファンタジー」という宮沢賢治の世界感は私には難解で、実は長年食わず嫌いで自分からすすんで読んだことのない作家のひとりでした。
ちょうど年末の29日にあった朗読教室の発表会で、参加者のひとりの小学6年生の娘さんの特別参加があり、この宮沢賢治の「やまなし」という作品を読みました。
やはり6年生の国語の教科書に載っているそうです。
やまなしは、3匹のカニの親子が川底で体験する5月と12月の出来事を詩的に表現している、朗読すれば15分以内の短い物語です。
この作品には「クラムボンが笑ったよ」「クラムボンが死んだよ」と、「クラムボン」という言葉や、お父さんのカニが喧嘩中のカニの兄弟に「イサドへ連れて行かんぞ」というセリフが出てきたり、実際には何を指すのかわからない謎の単語が頻繁に出てきます。
色彩に富んだイキイキとした文章ですが、何を伝えたいのかという明確なメッセージは文章自体からは示されません。
一般には、生と死をテーマにした作品であるともいわれているようです。
朗読の発表会では、その娘さんはとてもよく通る声ではきはきと、生命感あふれる声で読んでいました。
3匹のカニのセリフもちゃんと声音を使い分けられていて、読みそこなう部分もほぼなく、とても上手に堂々と読み通しました。
聞いているとそこには、ただただ宮沢賢治によって書かれた文章が素直に耳に届いてくるという感じです。
実はこの作品は、私も2年ほど前に一度朗読に挑戦した作品でした。
さきほども書いた通り私自身は宮沢賢治にはとても苦手意識があったのですが、これほどまでに人気があるのにはきっと理由もあるだろう、と考えてあえてチャレンジしてみたわけです。
このときはやはり
「宮沢賢治は何が言いたかったのだろう?」
「クラムボンとななんだろう?」
「カニの兄弟のお母さんはどうしたのだろう?(お父さんしか出てきません)」
と気になることばかりで、それらを自分なりに消化してから読む、という作業で進めていきましたが、結局「作品理解」という域には到達しませんでした。
しかしながら、先日の娘さんのダイレクトに耳に届く「やまなし」を聞いていると、宮沢賢治が何を考えて書いたかということはわきに置いて、「文章さえ聞く人に届けば、あとは聞く人の感性に任せてよかったのではないか」という気持ちになりました。
宮沢賢治、まだまだ朗読するには手ごわい作品です。
今日のブログを書くのを機に、2年前に読んだ自分の朗読を聞き返してみました。
今聞くと、イントネーションも不安定でスピードコントロールも効いておらず読むのがやっとで顔から火が出るほど恥ずかしく小6の娘さんには到底及ばない拙い出来です。
悔しいなぁ。。。いつかやり直したいなぁ。。。