鹿を写生しに奈良公園へ行きました。
先日行った名古屋の東山動物園でも動物の写生を試みましたが、描けたのはお昼寝中の「カバ」と比較的じっとしている「ツル」だけでした。
コアラも木の上でお昼寝中だとじっとしていますが、来園者の多い動物園で人気者の前を独占するわけにもいかないので動物園での写生はけっこう苦戦します。
「そうだ 鹿、描こう。」
自分が奈良市民であることをすっかり忘れていました。
奈良公園に行けば鹿など掃いて捨てるほどいます。私の動物写生のフィールドは最初から地元にあったのかもしれません。
動くものを描くということは、とても難しいことです。
特に奈良公園内でも観光客の多いエリアでは、鹿がせんべいをねだって活発に動きまわるので、とても描いてはいられません。
写生の教科書に、「とにかく手を動かしてたくさん描いていれば、そのうち描けるようになるものだ」とあるのでしばらく描いてみることにしました。
まずは、木陰でしゃがんで比較的じっとしている鹿にロックオン。
が、やはり頭部だけはどうにもじっとしていません。
いくつか団子状の鹿を描いてみましたが、これでは「鹿を描きましたが、なにか?」と思われてもしかたがない出来になってしまいました。
「動きまわっていても気にせず、とにかくいろんなポーズを描いてみよう」と思いたち、公園内をあちこち移動しながら描ました。
いっときもじっとしていない鹿たち。
その鹿を穴が開くほど見つめるワタシ。。。
とりあえず手は動かしますが、なかなか全体を描ききれません。
ダメな線ばかり引いているような気がします。
そうして2時間もしつこく鹿に向かっているうちに、ひとつだけ気づいたことがあります。それは、「自分の好きな鹿のポーズ」というものが見えてきた、ということです。
鹿は草食動物なので、外敵を察知すると瞬時に頭を上げてその方向を見る、という動きをします。
これは鹿特有の「いかにも鹿らしいポーズ」ですが、一方で警戒心がはたらいて少し緊張しているポーズでもあります。
反面、リラックスしているときは、たいていのんびりと下を向いて草を食んでいます。
私は『緊張感を切り取ったような絵』よりも、『時間の流れのようなものを感じる絵』の方が好きですし、常々そうした絵が描ければなぁとあこがれています。(これからそれは変化するかもしれませんが)
鹿のポーズも、下を向いて一心に草を食んでいるときが美しいと感じました。
鹿の姿を白い紙にイキイキと捉えるには、まだ写生スキルがかなり足りませんが、今日は「自分の好きな鹿のポーズ」がわかっただけでも収穫だったと思うことにします。