なこのすけらいふ

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管理職世代が遭遇する職場のモラハラの実際

職場のハラスメントでは『パワハラ』と『セクハラ』が挙げられることが多いですが、明らかなパワハラやセクハラとは違う、『モラハラ』に苦しめられているという人も多いのではないでしょうか。

 

モラハラとは
モラハラ、『モラル・ハラスメント』とはモラルに反した、繰り返し行われる精神的な虐待です。フランスの精神科医であるマリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱しました。

私は以前、上司である社長のモラハラで13年間働いた会社を退職した経験があります。

 

ターゲットの周囲をターゲットとして攻撃するパターン
大勢の前で人格を否定されるような叱責を繰り返される、というのは、まだ自分自身に向けられる攻撃でなんとか耐えることはできます。

最も耐え難いのは「他人を攻撃しているところをまざまざと見せつける」という手の込んだ悪趣味な攻撃のパターンです。

 

攻撃はたいてい会議やミーティングなど複数人のいる場で行われます。

 

加害者は社長ですからモラハラのターゲットとなるのは主に部長クラスの社員や役員です。

私がオブザーバーとして出席したある会議での出来事です。

会議では実務担当者として課長クラスのスタッフも参加していました。社長はあえてこの課長をターゲットに「ああ言えばこう言う」式の嫌がらせを連発し始め、無能呼ばわりして叱責を繰り返していました。

そしてその上司である部長に「こんな部下を持った部長も大変だ」と憐れみをかけ、同調を得ようとします。

これに反論すると攻撃の矛先がたちまち自分に向くことになるので、上司であるその部長は黙り込んでしまいました。

 

このパターンでは、本当のターゲットは上司である部長で、実際に叱責を受けている課長は生贄のようなものです。ですが、この課長はほどなくして退職しました。

 

このような会議に参加することは耐え難いことです。
私がこの時期に自分に課した課題は三つでした。

・ハラスメントに同調しない(納得できないことには反論する)
・部下がハラスメントにあわないよう注意する
・部門がハラスメントの加害者にならないよう注意する

この課題に従い、私は社長とのミーティングには決して部下を同席させないようにしていました。

 

自分自身への攻撃パターン
しかしながら、今度はハラスメントに同調しない私に対する攻撃が、その後だんだんと頻繁になっていきました。

「人としてどこかおかしいのではないか」「部長としての資質に欠ける」「頭がおかしい」などとよく言ってくるようになりました。

「私の何に対してそのように考えるのか」と尋常にたずねると「自分で考えろ!」と、非論理的に返してくるという典型的な嫌がらせが始まりました。

 

また私の前で周囲の人に「この人と話したら頭がおかしくなるから相手にしないように」と言いふらすなど、あまりにも幼稚な攻撃も止まりません。

 

さらに時間・ところかまわずミーティングと称して近所の喫茶店や飲み屋に連行され、長時間の人格否定を含む指導などで帰宅は深夜に及びます。毎日クタクタで気の休まる暇もありませんでした。

 

これって異常では?文献を調べ始めた
「どの会社でも社長というものはある程度は強権的だが、今のような状態は職場としてあまりに異常だ。この人はどこかおかしいのではないか?」と疑問を持つようになりました。

何か解決策があればという気持ちもありましたが、「なぜこの人はこのような行動をとるのか」を理解したかったのです。

 

色々調べてたどりついたのが冒頭で紹介したマリー=フランス・イルゴイエンヌの著作『モラル・ハラスメント人を傷つけずにはいられない』『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』という2冊の本です。

 

 

『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』では、様々な実例が出てきますが、「加害者になるのはどんな人たちか」という章の「横暴な上司~ある社長の場合」の実例が、私の経験とほぼ一致しました。

 

その広告会社の社長は、社員たちから<神>と呼ばれていた。病的なほど横暴で、何でも自分の思い通りにしていたからである。また、この社長は、人前で専務や部長を叱責することに喜びを覚えるという意地の悪いところがあった。そのやり方は巧妙で、専務や部長が<部下たちの前で評判を落とさないように>とおとなしくしているときを狙って、叱りつけるのである。(中略)社員たちは毎日、卵の上を歩くような気持ちで仕事をしていた。何しろ、理由もわからず、ある日、突然、激賞されたかと思うと、その翌日にはこてんぱんにけなされるのである。また、この社長は、絶対に自分の過ちを認めず、論理的に反論されると、話をはぐらかしたり、嘘をついたりした。(中略)会議をすれば、議題とは関係のないことを延々と話したり、自分の都合で退席すると、その一時間後に戻ってきて、退席していた間の話を最初から繰り返させることもあった。

(引用元:『モラル・ハラスメント人を傷つけずにはいられない』紀伊国屋書店、太字なこのすけ)


このタイプの加害者は「ある部署を完全に任された管理者に多い」とのことで、上層部がこの状況を改善する必要があるわけですが、加害者が社長だとどうしようもありません。

 

『モラル・ハラスメント人を傷つけずにはいられない』によると加害者の特徴として挙げられているのが下記の項目です。

 

・自分が偉くて、重要人物だと思っている
・自分が成功したり、権力を持ったりできるという幻想を持ち、その幻想には限度がない
・自分が<特別な>存在だと思っている
・いつも他人の称賛を必要としている
・すべてが自分のおかげだと思っている
・人間関係のなかで相手を利用することしか考えていない
・他人に共感することができない
・他人を羨望することが多い
(引用元:『モラル・ハラスメント人を傷つけずにはいられない』紀伊国屋書店

 

あまりにも本人の特徴に当てはまるので、この本のおかげで「これはモラハラだ」と理解するようになりました。

 

こんな状況下で退職するかどうかをかなり悩みましたが、ある時から出勤時のエレベーターの中で毎回動悸がしていることに気づき、「このままでは精神的にもたないかもしれない」と感じて、連れ合いと相談し、結局転職するに至りました。

 

私の場合は運よく転職先が見つかりましたが、アラフィフの転職は条件が厳しいです。私も収入が半減しました。

これほどハラスメントが横行する職場環境でも、子供の学費や家のローンなど、経済的な事情で辞めることができないという人もいます。

 

職場ハラスメントの被害者は若い層に多いような印象もありますが、管理職世代にとっても職場のハラスメントの影響は大きいと感じます。