奈良市の『松柏美術館』に行ってきました。
松柏美術館は、美人画で知られる上村松園さんと息子の松篁さん、孫の淳之さんの作品を展示する美術館です。
つい先日、館長の淳之さんの訃報がありましたが、展覧会は通常通りでした。
松柏美術館では今、『人物画を描く』という企画展をやっていいます。
離れて住む妹と最寄り駅で待ち合わせて行ってきました。
松園さんは格調高い美人画を多数遺されていますが、松篁さん、淳之さんは花鳥画を中心に描かれている日本画家です。
展示の説明文の淳之さんの言葉の中で「花鳥画はその形が美しくそれなりに描けばそれなりに絵になるが、人物画は、その人物の内面までを理解しうつしとらなければならず、自分にとってはおいそれと向かえるテーマではない」というような意味のことをおっしゃっていたのが印象的でした。
私も趣味で春から絵を描き始めて、今はまだ身近な植物や静物を中心に描いていますが、今後人物画も描いてみたいと思っていました。
このモデルさんがきれいだったから、とか、舞妓さんがきれいだから、という動機で描きだすのではなく、その人がどんな人なのか、その人のどんな内面を絵に表現したいのか、という自分なりの想いがなくては、人物モデルはただのモチーフとなってしまうんだな、というふうに理解しました。
松園さんが謡曲の物語を描いた『花がたみ』を制作する際に、狂女の表情を研究するために許可を得て精神病院の患者さんと交流させてもらった、とのエピソードも説明文にありました。
松園さんの美人画の女性の表情は、狂女であれ慈愛深い母親であれ、キャラクターが色濃く表現されていますが、これほど人物の内面を描き出すことに熱心であった松園さんのお孫さんだからこそ、人物画に対する畏敬の念が強かったのかもしれません。
松柏美術館は、日本画家上村三代の作品を多く所蔵していて、年数回企画展をされていますが、本画だけでなく下絵や写生も多く展示されますので、日本画を勉強する身にはとても貴重な展示だと思います。
鑑賞を終えて、敷地内のお庭を散策した後、『旧佐伯邸』のお庭にてお抹茶の野点をいただきました。
こちらでの野点の提供は今年の12月28日で終了なのだそうで、ちょっと残念ですね。